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東京の中堅Sierを退職して1年。美術展と映画にがっつりはまり、丸一日かけて長文書くのが日課になってます・・・

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【ネタバレ有】映画「ローガンラッキー」感想・レビューと10の疑問点を徹底解説!/祝!スティーブン・ソダーバーグ監督復帰第一作!

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【2017年12月9日最終更新】

かるび(@karub_imalive)です。

11月18日に公開された新作「ローガンラッキー」を見てきました。一度は映画製作を引退したスティーブン・ソダーバーグ監督が、4年ぶりに映画監督へと復帰した第1作目の作品です。

早速ですが、映画を見てきた感想やレビュー、あらすじ等の詳しい解説を書いてみたいと思います。
※本エントリは、後半部分でストーリー核心部分にかかわるネタバレ記述が一部含まれますので、何卒ご了承ください。できれば、映画鑑賞後にご覧頂ければ幸いです。

1.映画「ローガンラッキー」の予告動画・基本情報

▶「ローガンラッキー」公式予告動画
※画像をクリックすると動画がスタートします


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【監督】スティーブン・ソダーバーグ
【脚本】レベッカ・ブラント
【配給】ソニー・ピクチャーズ、スターチャンネル
【時間】119分

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引用:映画『ローガン・ラッキー』 | オフィシャルサイト | 

さて、本作でメガホンを取ったのは、2013年「サイド・エフェクト」映画監督業を引退して以来、約4年ぶりに復帰となったスティーブン・ソダーバーグ監督です。

ここ数年、中国マーケットへの売上や確実なリターンを重要視するあまり、ハリウッドではビッグバジェットの「過去のリブートもの」か「アメコミヒーローもの」企画以外は、出資者がなかなか現れず、作品を作るのが難しくなったと言われます。この状況に強い不満を抱いていたソダーバーグ監督は、 映画に見切りをつけ、代わって作家性を発揮できて、自由に表現が可能になってきたTVドラマ製作を主戦場としていました。

しかし、2年前、新人脚本家であるレベッカ・ブラントから、映画脚本へのアドバイスを求められたソダーバーグ監督は、この脚本に一目惚れしてしまいます。これをきっかけとして、ハリウッドスタジオを通さず、自らが製作・配給まで全てコントロールできる新しい映画製作のスキームを試す機会として、本作を復帰作として選んだのです。

早速、完成された作品は、自ら立ち上げた配給会社から全米の映画館へと供給されました。ソダーバーグ監督は、ここで自らの持論として、「必要以上に余計な広告宣伝費をかけない」という方針で、ハリウッドの大手スタジオとは違う宣伝方法を選択します。しかし、広告宣伝費をケチりすぎたのか、残念ながらアメリカでは興収約3,000万ドルとコケてしまいました。今回は、ソダーバーグ監督の目指した新しい映画作りの仕組みは上手く働かなかったということでしょうか。

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しかし、本作ではソダーバーグ監督が作品を完全にコントロールして制作することができたこともあって、作品としての完成度が高く評価されました。試写段階で映画評論家から絶賛され、評価サイトRotten Tomatoesでは驚異の93%を獲得しています。 

2.映画「ローガン・ラッキー」主要登場人物・キャスト

主要登場人物

ジミー・ローガン(チャニング・テイタム)f:id:hisatsugu79:20171122004359j:plain
引用:LOGAN LUCKY | Official HD Trailer - YouTube
ソダーバーグ監督作品への出演は今作で4度目。ストリッパー役で見事な肉体美を誇った「マジック・マイク」の肉体美はどこへ?ってな具合に、役作りのため10キロ程度増量して、すっかり田舎のオヤジになりきっています。2018年正月公開の「キングスマン・ゴールデンサークル」が待機中。こちらも楽しみです。

クライド・ローガン(アダム・ドライバー)f:id:hisatsugu79:20171122004327j:plain
引用:LOGAN LUCKY | Official HD Trailer - YouTube
映画「沈黙サイレンス」でのガリガリにやせた敬虔な宣教師役から、一転して筋肉質で無口なマッチョな姿へ、役作りが本当に上手な個性派俳優です。年末の「スターウォーズ8/最後のジェダイ」も今から楽しみです。なお、本作では片腕を失った元イラク帰還兵を演じていますが、俳優になる前は、彼は実際に軍隊で働いていた経験があるそうです。

メリー・ローガン(ライリー・キーオ)f:id:hisatsugu79:20171122004414j:plain
引用:LOGAN LUCKY | Official HD Trailer - YouTube
地元NASCARの第二の聖地で育ったせいか、車が大好き。地元で理容師として堅実な仕事に就きつつ、兄の娘の芸能活動における実質上マネージャーを務めるジミーの妹。服装・性格は完全に「マイルドヤンキー」そのものでしたが(笑)、女性成分が少ない本作において、存在感が際立っていました。もっと出演時間があってもよかったのに。

ジョー・バング(ダニエル・クレイグ)f:id:hisatsugu79:20171122004133j:plain
引用:LOGAN LUCKY | Official HD Trailer - YouTube
「007シリーズ」6代目ジェームス・ボンドですっかり定着しすぎてしまったハードボイルドな役割から脱却したいのか、その反動のように思い切り弾けた演技で、観客を魅せてくれました。「In-car-ce-ra-ted!」(投獄されてるんだよ!)というセリフが頭から離れません・・・

シルヴィア・ハリソン(キャサリン・ウォーターストン)f:id:hisatsugu79:20171122004148j:plain
引用:LOGAN LUCKY | Official HD Trailer - YouTube
ここ数年は「ファンタスティック・ビーストと魔法の旅」(2016)「エイリアン:コヴェナント」(2017)など、大作での主演抜擢が続きます。今作ではちょうど「エイリアン」の撮影時期だったのか、ショートヘアでの出演です。ちなみに、この人の出演する映画で「カントリーロード」がかかったのは今作で2回目です。

サラ・グレイソン(ヒラリー・スワンク)f:id:hisatsugu79:20171122004105j:plain
引用:LOGAN LUCKY | Official HD Trailer - YouTube
「ボーイズ・ドント・クライ」(1999)「ミリオンダラー・ベイビー」(2004)と、過去2回アカデミー主演女優賞を受賞している大物演技派女優ですが、ハリウッド作品では3年ぶりの出演。ここ数年は制作側に回ることも多く、ハリウッド作品での出演機会が減っていたので、久々の出演です。

3.途中までの簡単なあらすじ

かつて、高校時代はアメフトで地元の有名選手として、将来を嘱望されていたジミー・ローガン。試合中の足のケガが原因で、輝かしいキャリアを断念せざるを得なくなってから不運続きだった。地元で建設業の仕事に就いていたが、現在では失業し、妻子にも逃げられて散々な毎日を送っていた。

今では、面会日に前妻との一人娘、セイディの姿を見ることだけが唯一の生きがいだった。しかし前妻と現在の夫は、彼らが手がける事業拡大のため、リンチバーグへと移住することになり、ジミーはいよいよ最愛の子供との会えなくなる絶対絶命の状況に追い込まれたのだった。

そこで、ジミーは、起死回生の大勝負に出ることにした。地元シャーロット・サーキットで開催されるNASCARのレース中に、盗みに入るという一世一代の強盗計画を立てたのだ。早速プランを練り、仲間を集めることになった。イラク戦争帰りで片腕を失った元軍人で、現在は地元でバーを経営する弟クライド、美容師で無類の車好きである妹メリーに加え、爆破のプロで、現在形期服役中のジョーバングを説得し、計画に参加させることにした。

レース当日にジョーを一時的に脱獄させ、レース場の金庫を爆破し、仕事を終えた後に、看守にバレないように再び刑務所へと戻すという作戦を立てたジミー達。その下準備として、事前に弟クライドを刑務所へと送り込んだ。

迎えたレース当日、ジミーと仲間たちは、入出金のコンピュータ施設を爆破した上で、現金を金庫へと輸送する気送管設備へと忍び込む。素人集団ゆえに、何度も危うい場面があったが、事前に練り上げたプラン通りに何とか盗みを終えたジミー達だった。

ジミーの大胆な偽装工作と仲間たちの完璧なアリバイ、事なかれ主義の事件当事者の敵失にも助けられ、そのまま事件はお蔵入りになるかと思われたが、執念深いFBIのベテラン女性捜査官は、諦めずに真相を追及するのだった。果たしてローガン一味の運命はどうなってしまうのかーーー。

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4.映画「ローガン・ラッキー」の感想・考察・評価

ソダーバーグ監督の「オーシャンズ11」を強く想起させる作品!

見終わった第一感としては、スティーヴン・ソダーバーグ監督の代表作「オーシャンズ11」シリーズに非常に似ているな、ということ。『金に困った主人公が、仲間を集めて、周到なプランを練って、金庫から現金強奪の大勝負をする』というプロットは、ほとんど同じといっても過言ではありません。実際、ソダーバーグ監督自身も、インタビューで何度も「オーシャンズ」シリーズとの関連性を自ら口にするなど、2つの作品には、自他共に認める強い共通点がありました。

その一方で、本作は、「オーシャンズ」シリーズの様々な要素・設定を、アナグラム的にすべて反転させて製作された面白さが際立ちました。よくよく見てみると、物語中のほぼすべての要素が、オーシャンズとはほぼすべて対照的な設定になっているのですよね。

▼オーシャンズ11とローガン・ラッキーの設定比較f:id:hisatsugu79:20171121233425j:plain

オーシャンズ・シリーズでは、ジョージ・クルーニー率いるきらびやかで知的な登場人物たちが、スタイリッシュでスピーディな動きで観客を楽しませますが、今回のローガン・ラッキーでは、全てが逆なんですよね。一見鈍重で頭の悪そうな田舎のオッサン素人集団が、試行錯誤をしながら何とかノロノロと仕事を進めていきます。喋り方も遅く、現場でもモタモタするなど、見ているこちら側が「こんなにゆっくりしてて大丈夫なのかな?」と心配になるほど不器用な感じが微笑ましいのですよね。

金庫破りの犯罪映画として自ら打ち立てた金字塔である「オーシャンズ」シリーズをベースに、見事なほどに対置的な設定で置き換えたセルフ・パロディ作品として、非常に見応えのある作品でした。

アメリカの現代社会への風刺が効いた、アメリカ人のための映画だった

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引用:LOGAN LUCKY | "America" TV Spot - YouTube

一見、ユルいコメディ犯罪映画のように見える本作ですが、そこは映画作りの職人、ソダーバーグ監督。本作では、映像や設定、セリフなど、映画の様々な階層で、意外なほどに政治的なメッセージが込められていることに気付かされます。

本作をよく見てみると、「二極化して疲弊するアメリカ現代社会」への風刺と「古き良きアメリカへの郷愁」を散りばめた、極めてドメスティックな作品に仕上がっているんですよね。

まず、チャニング・テイタムとアダム・ドライバーの演じるローガン兄弟の存在自身が、アメリカという国そのもののメタファーになっています。ジミーは、高校時代アメフトで将来を嘱望される地元のスーパースターですし、弟はイラク戦争で活躍したアメリカ軍兵士でした。そんな彼らの現在と言えば、それぞれ手足を負傷し、傷つき、社会の片隅に追いやられる存在として描かれます。落ちぶれた二人の現在が、「かつては強かったアメリカ」の没落とぴったり重なるわけです。

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華やかなレース場の地下で重労働に従事するジミー
引用:LOGAN LUCKY | Official HD Trailer - YouTube

さらに、舞台設定も強烈でした。アメリカの富と名声の象徴でもあるNASCARの華やかなレースを楽しむ人々とは対照的に、サーキットの陥没穴を修理するため働く炭鉱夫たちの姿は、まさに共和党政権下で、二極化が進むアメリカ社会の縮図そのものに見えました。

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ほとんど外見の違いがない二人だが・・・
引用:LOGAN LUCKY | "America" TV Spot - YouTube

さらに、ジミー(元夫)とチャップマン(現夫)の鮮やかな対比描写も面白かったです。外見は、ほとんど変わらない恰幅の良い田舎のオッサン二人ですが、片方は地元の実業家として事業に成功した上流層、片方は失業して携帯代さえ払えない極貧の最下層と明暗はくっきり。地縁でつながったローカル社会にも、強烈に貧富の差が発生している様が描かれました。

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事なかれ主義で保身・不正に走る社会の上層部(?)
引用:LOGAN LUCKY | "America" TV Spot - YouTube

それと同時に、社会上層部の「持っている」人たちが既得権にしがみつく姿勢も風刺的に描かれました。例えば、それは囚人たちの暴動や不正に対して見て見ぬふりをする刑務所の責任者や、盗難保険を悪用して不正に一儲けしようとするサーキットの経営者の汚さです。映画内では、彼らを直接糾弾するのではなく、敵失としてジミー達の完全犯罪の成立に手を貸してしまっている状況をコメディ的に描くことにより、マイルドに風刺を効かせる職人的な上手さが感じられました。

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今から盗みに入るのに、歌ってます・・・
引用:LOGAN LUCKY | "America" TV Spot - YouTube

一方、本作はそんな疲弊した矛盾だらけのアメリカ社会の現状に対して、「古き良き日のアメリカ」への思いも散りばめられた作品でもありました。NASCARのコカ・コーラ600のレース前には、国民を代表するカントリー歌手リアン・ライムスが「America the Beautiful」をしっとりワンコーラス歌い上げますし、これから盗みに入るジョー達まで、観客と一緒に歌ってます(笑)

また、前フリとして疲れきったジミーが車のカセットデッキでかけた「カントリーロード」。ウエストバージニア州の美しき故郷を表現したアメリカ人にとってクラシックなナンバーです。これを、クライマックスに差し掛かる時、美少女コンテストのステージで愛娘が「今日はパパの好きな曲」として、ワンコーラス歌い上げるんですよね。これは泣けます。うまい演出でした!!

また、ラストシーンでバーに集まった仲間たちの服装が、見事に「赤」(メリー)「白」(ジョー)「青」(クライド)と分かれ、アメリカ国旗を思わせる星条旗カラーになっていたのも面白い趣向です。バーの名前「Duck Tape」とは、配管修理などに使われるガムテープのことを指しますが、大仕事が終わって絆を深めた仲間たちに、ソダーバーグ監督の祖国アメリカに対する思いが乗せられているような気がしました。

興収はコケるも、映画好きからは絶賛!ソダーバーグ監督の職人的映画作り

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引用:LOGAN LUCKY | Pro Con Scene - YouTube

今作は、4年間のブランクを全く感じさせない、非常に濃厚で、映画作品らしい映画でした。ソダーバーグ監督の映画作品の特徴として、

・説明的セリフよりも映像でストーリーを語る
・非常に複雑でトリッキーな脚本である
・展開がスピーディでカット割りが細かい

という特徴がありますが、本作はまさにこれ!政治的風刺もたっぷり効いた映像や構図も面白いですし、強盗作戦も非常に複雑な伏線と仕掛けに満ちていて、片時も画面から目が離せないのですよね。ポップコーンを食べているヒマもありません(笑)この、画面に食い入るようにして映像を能動的に見なければいけない「苦しくも楽しい」作業が、今回も「あー、映画を見ているなぁ」という気持ちにさせてくれます。

しかし、一方で、

・映画内で全て潔く種明かしをする
・大切な手がかりは、「アップ」で強調してくれる

ので、複雑なシナリオであっても、何度も見れば必ずわかります(笑)今回も、僕は1回ではわからなかったので、2回目でようやく理解するに至りました。

これらに加えて、今回、特に面白かったのが、セリフや設定での言葉遊びやシュールな演出部分ですね。英語ネイティブならなお笑えたのでしょうが、本作の類似作品に対して、映画内で「オーシャンズ・セブン・イレブン」とか「Furious Fast」(Fast & Furious 8=ワイルド・スピード8)とからかってみせたり、ダニエル・クレイグがゆでたまごを食べるシーンとか、ジョー・バングの兄弟が便座のような物を投げる遊びをしていたり、笑えるシーンが沢山ありました。

このように映画的な楽しみに溢れた作品なので、何回見ても新しい発見がある作品だと思います。ジワジワと良さがわかってくる「スルメ」系作品なので、1回目でピンと来なかった人は、あとでDVDなどでもう一度見てみるといいかもしれません。

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5.映画「ローガン・ラッキー」に関する10の疑問点・謎を解き明かす~伏線・盗みの手口を徹底考察!~

本作をより深く理解するため、ストーリーや設定について、その要点となりそうなポイントを考察してみました。内容上、映画を1度見終わった人向けのコンテンツとなりますので、ここからはネタバレ要素が強めに入ります。予めご了承下さい。

疑問点1:合言葉「カリフラワー」とはどんな意味があったのか?

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引用:ウィキペディアより

直前に炭鉱夫の仕事をクビになったジミーが、弟クライドのバーに立ち寄り、帰る時につぶやいた「カリフラワー」という暗号のような言葉。これを聞いたクライドは、怯えたような顔つきで固まりますが、これは、ジミーがローガン家の面々に対して、「起死回生の一発勝負をやろう!」という作戦指令コードでした。

過去、ジミーが「カリフラワー」を持ちかけた計画はすべて失敗しており、その都度クライドは少年院に入ったり大変な目に遭っているのですが、妙に結束力の強いローガン家では、長男の「カリフラワー」指令には誰も逆らわないのですね(笑)

ちなみに、「カリフラワー」の花言葉は「お祭り騒ぎ」という意味があるのだそうです。本作の荒唐無稽な強盗計画にぴったりの花言葉であります・・・。

疑問点2:盗みの舞台となった「シャーロット・モーター・スピードウェイ」とは?NASCAR「コカ・コーラ600」とはどんなレース?

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今回の盗みの舞台となった「シャーロット・モーター・スピードウェイ」は、アメリカの6大スポーツの一つと言われ、ストックカー(市販車)で争われる自動車レースの最高峰「NASCAR」の第二の聖地として有名なサーキットです。サーキットは、いわゆる陸上競技のトラックのような「円形」オーバルコースで、1周2.4キロのコースを周回することで、レースが行われています。

例年5月末、このサーキットで行われる「NASCAR」最大のイベントのうちの一つが、「コカ・コーラ600」と言われるレースです。文字通り約半日かけて、600周を高速で周回する耐久レースです。全米にTV中継も行われ、数百万人の観客がレースをTV観戦すると言われています。(だから、こんな日に盗みをやりたくはなかったのでしょうね・・・)

疑問点3:NASCARのレースで謳っていた歌手は?また、その曲名とは?

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引用:LOGAN LUCKY | "America" TV Spot - YouTube

NASCARのレース開始前、歌われていたのは「America the Beautiful」という曲で、19世紀中頃に作られた、アメリカの大自然を称える歌詞が印象的な曲です。国歌として位置づけられる「star spangled banner」に次いで、アメリカ第二の国歌とも言われるほど国民に浸透しており、こういった国民的的イベントではよく歌われているようです。

ちなみに、劇中で「America the Beautiful」を歌うのは、カントリー・ミュージックの国民的歌手であるリアン・ライムスでした。所属レーベルの公式音源がYoutubeにアップされていますので、貼っておきますね。

▶「America the Beautiful」公式音源
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疑問点4:ジミーの立てた「盗み」の行動計画10か条の中身とは?

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引用:映画パンフレット裏表紙より

これまでの人生はやることなすこと全て裏目に出てきたジミーですが、彼には非常に几帳面な計画性があったのです。強盗を行う前に、10か条のチェックリストをメモに書き出し、これを忠実に守って計画を成功させたのです。

なお、メモ書きの中身を直訳すると、こんな感じです。

★盗みのための10か条

1)盗みに入ると決意する
2)計画を立てる
3)予備の計画も立てる
4)しっかり意思疎通を行う
5)注意深くパートナーを選ぶ
6)予想外の出来事が起こると心得る
7)ムカつくことも起きる
8)決して欲張らないこと
9)必ず、ムカつくことは起きる
10)引き際をきちんと見極める

映画を見返してみると、ジョー・バングから、本当にどうしようもない兄弟を監視役として押し付けられた他は、ほぼきちんと10か条に従って行動できていましたね。ここまで冷静沈着に行動できるのに運が悪いのは、やっぱり”ローガンの呪い”なのでしょうか(笑)

疑問点5:小屋のような建物に火をつけた狙いは何だったのか?

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引用:LOGAN LUCKY | Official HD Trailer - YouTube

レース当日、まず強盗計画の一番最初にジョーバングの弟たちが手掛けたのが、離れにあった建物の爆破でした。爆破直後に、サーキットの全ての売店をコンピュータ管理しているPOSシステムがダウンしたことから、この建物はサーキットの業務システムのサーバ室だったのでしょう。

このステップを最初に入れておくことで、売店のレジにて売上金の管理ができなくなり、金庫内にいくら入金されていたか把握不能になったため、後日警察が操作する際に、一体いくら盗まれたのかわからなくなる効果がありました。非常に戦略的な行動です。

疑問点6:気送管内にゴキブリを放ったのは何の意味があったのか?

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引用:LOGAN LUCKY | Official HD Trailer - YouTube

これは、どの気送管がどう金庫につながっているのか事前にチェックするために実行されました。まず、彼女の車に傷をつけ、当て逃げ事件を装って金庫管理の職員を、金庫が自動で閉まる17時30分以降まで建物外部の駐車場に引きつけておくことによって、金庫内にケーキが置かれたままの状態にします。

その上で、メリーが用意した、背中に色付きのゴキブリを気送管にそれぞれ放り込むことによって、ケーキへと到達したゴキブリが何色だったのかチェックすることで、金庫へと直結する気送管のルートを判別していたのでしょう。複雑なプロットですが、よく考えられていました。

疑問点7:ダクト内のグミと塩で作った爆発物は本物なのか?

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引用:LOGAN LUCKY | "America" TV Spot - YouTube

本作のトリックで、一番笑えたのがこのシーン。ジョー・バングが非常に原始的な方法で、気送管を通じて「お手製の」爆弾を金庫へと送り込むシーンです。この時、ジョーは、砂糖漬けのグミと食卓塩で即席の爆弾を作っていましたが、果たして本当にできるのでしょうか?ジョーは、劇中で「Youtubeにアップされてる」と言っていましたが、調べてみたら本当に幾つもアップされていました(笑)

Youtube上では、グミと塩に熱を加えることによって、爆発的な反応が起きる動画がいくつもアップされています。(映画内では、触媒を使って加熱)あくまで教育上の理科実験・・・ということなので、本当にマネしないようにしてくださいね(笑)

▶グミと塩で爆発物が作れる?!検証動画
※画像をクリックすると動画がスタートします


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疑問点8:なぜ、ジミーはわざと盗んだ大半の金をコンビニに置いてきたのか

お金を盗み出したところまでは「オーシャンズ11」と同じ展開でしたが、そこから意外な展開に進んだのが、ジミーがコンビニに盗み出した金を、全部置き去りにして姿を消したことです。

「ジミーは本当は善人で、土壇場で良心に目覚めたのか?」と最初は解釈していたのですが、たぶんこれは違います。その後、彼がもう2~3袋程度札束を詰めたゴミ袋を持ち出し、別途ゴミ収集車に回収させ、約2ヶ月後くらい後に廃棄処分場から掘り返すという周到な手順で盗んだ金を回収するシーンが種明かしされました。決して良心に目覚めたわけではなかったのですね。ちゃんと、周りの協力者に謝礼を支払っても、まだなお自らの生活をやり直せるだけのお金を手にすることができていたのです。

したがって、コンビニに金を置いてきたのは、「決して欲張りすぎない」「引き際をわきまえる」という自らに課したチェックリストに沿って、巧妙に考え抜かれたジミーの仕掛けた作戦の一部であり、もっとも重要なポイントだったのです。

なぜなら、コンビニに一旦奪った大半のお金を置き去りにすることで、まず、自らのアリバイと動機を消すことができました。次に、マスコミから「世直し泥棒?」的な扱われ方をされたため、世論の好意的な関心を獲得することができました。さらに、お金を取られた関係者も、保険が下りたことにより、事件への関心をなくしていきます。こうした心理的効果と完璧なアリバイにより、FBIの捜査は撹乱され、最終的に事件はうやむやのまま忘れ去られることになりました。

疑問点9:クライドの義手は、スターウォーズへのオマージュ?

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引用:LOGAN LUCKY | Official HD Trailer - YouTube

ところで、(どうしても時期柄か)本作を見ていて連想してしまったのは、クライドの義手は、スターウォーズへのオマージュなのか?ということです。彼がスターウォーズシリーズで演じるカイロ・レンは、ダークサイドに堕ちたダース・ベイダーの信奉者です。ダース・ベイダーといえば、シリーズ中、何回も「腕」を切り落とされるシーンがありますよね。アナキン時代、エピソード2でドゥークー伯爵に落とされ、エピソード3ではオビ=ワンに、エピソード6でのルークとの最後の戦いに腕を切り落とされています。

さらに、映画ラストで、盗んだお金で購入したであろう新しい義手は、ダース・ベイダーを強く想起させる「黒」の義手でした。映画内では、もちろんなんの関連性も言及されませんが、非常に面白い映像でした。

疑問点10:ラスト結末の考察~ローガン家に伝わる「呪い」は解除されたのか?

ところで、ラストシーンは非常に練られていて面白い構図でしたね。事件後、兄妹の前にからも姿を消して身を潜めていたジミーが、数カ月ぶりにクライドのバーに現れました。使用料滞納により、ようやく携帯電話が通じなくなった=FBIが自分に対する盗聴を止め、事件捜査が終了したと判断できたからです。

まとまった金を得て、娘の側に移住もできたジミーですが、最後に気になるのは、「ローガン家の呪い」の行方です。ローガン家の呪いは、「物事がうまくいきかけた後に発動する」のでした。アメフトで頭角を表したジミーは足を負傷し、作戦終了後、イラクから帰還する直前にクライドは腕を亡くしています。

そんな時、皆がくつろぐ中、バーカウンターの反対側に現れたのは、よりによって最後までジミーたちを疑っていたFBI捜査官のサラ・グレイソンでした。オーシャンズ11でも、幸せそうにしている主人公たちが車で走り去っていく中、ダニー達の犯行に気づいていたカジノオーナーの側近2人が執拗に主人公たちを追いかけていくシーンで終わりましたが、本作でもやっぱり来ましたね(笑)

物語上は、サラ・グレイソンがお酒を注文するシーンで終わりますが、エンドロールに入る直前の1秒程度フォーカスされた、ビールのコップを持ったクライドの義手のラストショットが、ローガン家の呪いが再び発動されそうな先行きを暗示しているようでした。

6.まとめ

スティーブン・ソダーバーグ監督が、新しいビジネスモデルで映画監督に再挑戦した本作は、緻密にプロット・映像・セリフが練り込まれた映画らしい映画でした。必ずしも経済的に成功した感じじゃなさそうですが、これからも是非映画監督として優れた作品を作っていってほしいなぁと思います。
それではまた。
かるび

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7.映画をより楽しむためのおすすめ関連映画・書籍など

ローガン・ラッキー「オリジナルサウンドトラック」

本作は、70年代~80年代の香りがするどこをどう切り取っても「アメリカン」な香りのするカントリーミュージック主体の劇伴音楽が素晴らしかったです。日本盤は未発売なのですが、普段作業用のバックミュージックとしてもかなり使える感じなので、これはおすすめです!

ソダーバーグ監督の代表作「オーシャンズ11」

スティーブン・ソダーバーグ監督が広く世の中に知られる決定的なきっかけとなった作品。当時、全世界で4億ドル以上の興収を稼ぎ出した、クライム・サスペンスムービーの金字塔です。ローガンラッキーと物語の構造にかなりの共通点があるので、見比べてみると本当に面白いですよ!

スティーブン・ソダーバーグ監督作品は、まとめてU-NEXTで!

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